「移植医療をめぐる問題」小論文・面接試験の最頻出テーマ

「移植医療をめぐる問題」小論文・面接試験の最頻出テーマ

今回のテーマは、移植医療をめぐる問題です。小論文のテーマとしてはあまり出題されない傾向にありますが、面接では依然として出題され続けています。2009年の法改正により、様々な問題も生じてきています。しっかりポイントを押さえておきましょう。

1. 脳死の定義

従来、人の死とは心臓の機能が停止する状態を意味する心臓死をいい、呼吸の停止、心拍の停止、瞳孔の拡大という三徴候説が主流であった。ところが、交通事故などで、脳に大きな損傷を受けてしまい、脳の機能が不可逆的に停止する場合がある。つまり、人工呼吸器などの生命維持装置で生かされている状態である。この状態を脳死という。

2. 臓器移植の功罪

臓器移植とは、病気や事故などで機能が損傷した臓器を、他人や他の動物の健康な臓器と交換することをいう。臓器の提供者をドナーといい、臓器を受容する者をレシピエントという。ドナーが生きていれば生体移植、死んでいれば死体移植という。

 

臓器移植の目的は、ひとりでも多くの患者の苦しみを緩和して、尊い生命を救うことにある。しかし、乗り越えなければならない問題点も多い。まず、脳死判定の正確性や安全性に問題が残ること、そして人体を機械の部品のように扱うことで臓器売買が行われ、生命倫理上の問題があること、とくに子供は臓器売買に関するビジネスや犯罪に巻き込まれやすいこと、さらに臓器が欲しくて患者の延命治療を積極的に行わない医療現場の風潮が生まれる可能性があることなどが挙げられる。

3. 旧臓器移植法の問題点

日本では1997年、臓器移植法が成立し、臓器移植を前提にした場合のみ、脳死判定によって脳死を人の死と認め、臓器移植が可能となった。これによって、脳死体から臓器移植をすることで、多くの患者を救うことにつながる道が拓けたといえる。

 

しかし、同じ脳死状態であっても、臓器移植を前提にした場合は、脳死判定を経て患者は死んでいることになるが、臓器移植を前提としない場合は、患者は生きていることになり、心臓の停止によってはじめて死んだことになる。つまり、2つの死が存在する結果になった。また、患者本人による書面での臓器提供の意思表示と家族の同意が必要だったり、15歳未満の者からの臓器提供や、親族への臓器の優先提供は認められないという事情から、臓器移植があまり進まなかった。実際、2009年の春までに行なわれた臓器移植は約80名にとどまっている。

4. 新臓器移植法の改正点

2009年、なかなか進まない臓器移植を増やす方向で臓器移植法が改正され、以下の4つの点が大きく変わった。1つ目は、臓器移植の場合という条件を撤廃し、一律に脳死を人の死とするようになった。2つ目は、患者本人の書面による意思表示を不要とし、患者本人が拒絶しない限り、家族の同意のみで臓器摘出が可能となった。3つ目は、臓器提供者の年齢制限を撤廃し、15歳未満の者からの臓器移植も可能となった。4つ目は、親族への優先提供が認められるようになった。

 

臓器を待つ患者の立場から見ると、よい方向に改められたといえるが、患者の意思表示を不要するという点については、脳死状態にある患者の人権が軽視されかねないため、今後さらなる議論の余地が残されている。また、患者本人の書面による意思表示が不要となったことで、家族が臓器提供に同意するかどうかの判断をしなければならず、大きな精神的負担を強いることになると批判されている。

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