これから医学部を目指す方は、まず、志望校を決める必要があります。「医学部は学費と偏差値が反比例している」と言われるように、偏差値の高い医学部ほど学費も比較的リーズナブルです。そのせいか、ほとんどの受験生はまず国公立をはじめとしたハイレベルな大学を検討します。そのため、国公立の医学部は非常に競争率が高く、狭き門となっていることをまずは知る必要があるでしょう。
国公立の医学部を目指す場合、東京大学や京都大学、東京医科歯科大学といった最難関レベルの医学部の偏差値は70台前半です。こういった大学の場合、共通テストの必要科目でコンスタントに9割以上の得点をキープするのは当たり前、さらに本質的な思考力が問われる個別試験に対応する能力が必要になります。大手予備校のトップクラスに所属し、そのなかでもトップ層に位置している受験生が合格するイメージです。まさにアナザーワールドですね。
地方大学の医学部の場合、偏差値は60台後半くらいになります。これらの大学も、共通テストでは9割以上の得点が望ましく、あとは地元の地域医療にどれだけ貢献する気持ちがあるかが小論文や面接などで問われます。地方大学では地域枠という出身者を限定した枠が用意されている場合もありますが、基本的にはハイレベル・高競争率なことに変わりはありません。実際、4浪以上の受験者が合格者全体の2割程度を占めるところもあるようです。
では、私立大学についてを見てみましょう。私立大学の偏差値が低かった時代は過ぎ去り、今や滑り止めがないと言われるほど、どの大学も偏差値は上昇しています。試験に必要な科目が少ない分、得点も非常に僅差での戦いになると心得てください。
そんな中でも、慶應義塾大学や東京慈恵会医科大学といった最難関レベルでは、難関国公立大学と同じレベルの学力が必要です。入試問題では本質的な思考力や応用力が問われますし、そもそも受験者層に難関国公立大学の受験者が多くいます。たとえば、東京大学を目指しながら、押さえとして東京慈恵会医科大学を狙うというタイプです。万が一、彼らが難関国公立大学に合格できなかった場合、最低でも難関私立大学は合格する、という傾向がありますので、最難関レベルを目指す私立専願者は彼らと対等に戦う心構えが必要です。
次に、順天堂大学や昭和大学、東京医科大学、東邦大学といった難関レベルでは、大量の基本的な問題をケアレスミスなく解いて高得点できる事務処理能力が求められます。さらに、地方の大学の場合、問題の出題傾向やマーク・記述といった出題形式が大学によってかなり異なるので、過去問研究が欠かせません。とくに数学は、毎年のように特定の分野が出題されるなど、大学によって出題分野にバラつきがあります。極端に言えば、仮に10校受験する場合、10校それぞれに合わせた過去問対策をしなければならないので、ある程度志望校を絞る必要があるのです。したがって、問題の難易度は高くないものの、自分との相性を見極めて志望校選びをすることが非常に重要になってきます。
このように、自分の学力が伸びる可能性を見極めながら、1年で狙えそうな射程距離にある大学を選べるか否かが、医学部合格のカギを握ります。逆に言えば、こうした現実を知らずに漠然と勉強していても、せっかく実力はあるのになかなか受からないという結果になりかねません。大学のブランドや個人的な思い入れが強すぎて、何年も浪人し、挙句の果てにどこにも受からず心身ともに疲れ果ててしまうことのないように気をつけましょう。
医師国家試験の合格率は、現在どの大学でも8割を超えており、大きな差はありません。また、6年の修学期間を終え、年間の卒後臨床研修を終えて、実際に医師として第一線で働く際の年齢のことなどを考えれば、できるだけ早く医学部に入学し、医師になるための勉学に邁進するべきであるでしょう。そのためにも、志望校は自分のこだわりと学力のバランスを考え、慎重に選ぶべきだといえます。
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