私が体験した医学部受験の経験から、みなさんへお伝えできることを伝えていきたいと思います。はじめに、私は4年間の浪人生活を経験しました。今、振り返ると、1,2年目の自分は医学部受験というものに対し、あまりにも無知でした。正直、医学部受験を甘くみていました。浪人していれば、いずれは受かるだろうと思っていました。遊びにも行っていました。しかし現実は違いました。今思うと本当に情けないです。実際、今の私から浪人を始めようとしている私に対してアドバイスができたのなら、もっと早く医大生になれたのではないかなと思っています。そんな経験も踏まえて、皆さんにお伝えできることを伝えられたらいいなと思っています。
私は3浪目で医学部受験の現実と、自分の実力不足を痛感し、4浪目になってからは毎日12時間以上も死に物狂いに勉強した結果、合格を勝ち取ることができました。また、個人的には、勉強方法などのアドバイスはその人それぞれの性格などによって変えるべきだと思いますので、今回は全ての人が参考になるよう、精神面などを主に伝えていきたいと思います。
ですから、私は医学部受験を失敗した経験もあります。この度は、せっかくいただいた機会ですので、私が失敗から成功に至るまでの経緯をありのままに書いていきたいと思います。少しでもみなさんがこれから勉強を進めていく上でお役になれたら嬉しいです。尚、私は勉強に対するポテンシャルが無い分、努力で合格を勝ち取ったと思っておりますので、自分に対してはなかなか厳しく、ストイックに勉強するタイプでした。ですからタイプが合わない方や、参考にならない方もいるかもしれませんが、私が受験生だった時に思っていたことや実践していたことをそのまま書いていこうと思うので、目を通していただけたら幸いです。
まずは医学部受験とはどのようなものなのかを知らなくては何も始まりません。年々過激化する医学部人気の中で、みなさんが掴み取ろうとしている合格は並大抵の努力では勝ち取れないでしょう。私は身をもって医学部受験の厳しさを体験してきました。定員100人程度の枠を争って、全国からその日に勝負をかけてきた3000から4000人程度の受験生が集まってきます。
厳しい話をしますが、試験に向けて何年間も、何時間も、一生懸命勉強していたとしても、たった60分程度の試験時間の中で、答案用紙という紙切れ一枚に今まで努力の跡を残せなければ、自分の頑張りは社会からは全く評価されません。身内からは「頑張っていたよね。」と努力を評価されたとしても、“不合格”という括りの中での社会からの評価としては「あと1点で合格だった」という人と、「全く勉強をせずに白紙で答案を出した」という人とは同じなのです。それでは悔しいですよね。ですから皆さんは、ただ勉強を頑張るだけではなく、「本番で合格に繋がる力」を身に着けなければいけません。
では、「本番で合格に繋がる力」とは一体どうすれば身に着くのでしょうか。試験本番では何が起こるか分かりません。1教科でも失敗すると難しいと言われている医学部受験ですが、失敗することももちろんあります。そんな中で「本番で合格に繋がる力」とは、「失敗しても合格するだけの学力を身に着けること」だと私は思います。要は、自分の志望校があるのなら、志望校相応の学力ではなく、志望校以上の学力を身に着ける必要があるということです。
そのためには勉強するしかありません。今、あなたがこうして私の合格体験記に目を通してくださっているこの瞬間にも、来たる受験日に向けて必死に勉強しているあなたのライバルが全国にはたくさんいます。皆さんが挑戦しようとしている医学部受験は簡単なものではないということをしっかりと認識した上で、それでも私は受かるんだ!という気持ちを絶やすこと無く、合格を勝ち取れるよう、気を引き締めて努力してほしいと思います。
逆にいうと、気持ち次第で1年後の合否は大きく変わります。今の実力など関係ありません。どんな人であれ、本気で頑張れば必ず合格できると私は信じています。最後まで諦めないでください。最後まで自分を信じて頑張り続けた人の勝ちです。
先程から気持ちが大事だと述べておりますが、医学部受験を成功させるために必要のものを一つだけ挙げろと言われれば、私は即答で「執念」と答えると思います。執念とは、ある一つのことを深く思いつめ、執着してそこから動かない心です。私は誰よりも執念があったと思っております。長い浪人生活の中、苦しいことばかりでした。浪人したからって合格が保証されるわけでもありません。模試でA判定をとっても本番合格するとは限りません。(実際、私がそうでした。)先が見えない暗闇を這って進んでいるよう気持ちでした。
先程から偉そうなことを言っておりますが、実は私自身も辛くて苦しくて何度も諦めようかなと真剣に考えました。ですが、私にとっては浪人時代の苦しみと、医師になるという夢を諦めるという選択肢を選ぶ苦しみでは、どう考えても前者の方が楽でした。医師になりたいという気持ちだけは誰にも負けない自信がありました。だから私は頑張れたのだと思います。
皆さんは何故医師になりたいと思ったのですか?胸を張って医師になりたいと思う気持ちだけは誰にも負けないぞ!と語れますか?よく、「医師は給料が高いから」といった理由や、「親が医師だから」といった理由で目指す人がいると聞きます。(以下、私が大学に入ってから、最初のガイダンスで先生方から言われたことのお話しも含めて述べさせていただきます。)
しかし、厚生労働省によると、人口減少や医学部の定員増加により、2040年には医師は1.8~4.1万人程度余ると言われています。2040年となると、まさに私たちが働き盛りの医師になっている頃でしょう。そのころに医師が余るというのです。要は医師免許を取得しても、医師として仕事ができるとは限らないのです。医師だからといって贅沢な暮らしができるわけではありません。しかし、医師という職業にはお金では買えない価値があります。私たちはそのような厳しい状況でも医師にしか得られない価値を追い求め、医師として働き続けられるように、一生勉強し続けなければいけません。曖昧な志望理由や軽い気持ちではたとえ医学部入試を突破したとしても、その後乗り越えられないでしょう。誰にも負けない強い執念を持ち続け、努力をしてください。そうすれば必ず来年の春はきっと笑顔で迎えられるはずです。
先程も、医学部入試を知ることは大切だといった話をしましたが、大学ごとの分析を徹底的に行うことは非常に大切です。私立医学部は特に、入試問題に関しても大学ごとの特色が強く、傾向は全く異なります。一般的に「私立医学部偏差値ランキング」といったものが存在しますが、正直、私は無意味だと思っています。なぜなら私立医学部入試に関しては“偏差値には現れない難しさ”が存在するからです。
実際、私自身、受験後に成績開示を行ったところ、自信のあった中堅私立医学部よりも、最も偏差値が高く、最難関とされている全く自信の無かった私立医学部の方が点数がとれていて、惜しかったこともありました。偏差値的に中堅レベルだからといって、簡単なわけではありません。中堅校は問題がものすごく難しかったり、ものすごいスピードで処理する能力が求められたり、問題が簡単なところは一つの失点も許されない学校もあります。逆に、難関校だからといって諦める必要もありません。マーク式なのか、論述式なのか、英語の配点が高いのか、理科の配点が高いのか、試験時間が短くてスピード重視なのか、あるいは試験時間が長く考察重視なのかなど、問題の相性や傾向、配点などを調べ、早めに志望校の選定を行いましょう。
そして、先程も述べたように、志望校に合格したいのならば、志望校以上の学力が必要になります。目標は誰に笑われても高く持ちましょう。国立志願者なら最難関であるT大学を、同じく私立志願者ならK大学を本気で目指すつもりで勉強してください。これは本当にそのつもりで勉強した方がいいと思います。模試にもぜひとも志望校の欄に書いてみてください。私もそのつもりで勉強していました。私の通う東邦大学に合格してきた人たちもほとんどの人たちが同じことを言っておりました。
色々と厳しいことも書いてしまいましたが、医学部受験が厳しいからと言って、あまりにも自分に対してストイックになりすぎたり、一人で部屋にこもって一日中勉強していればいいのかというと、もちろんそうではありません。受験は何事も「継続」が大切です。必要以上に自分に負荷をかけることなく、試験本番まで気持ちや体調、生活リズム、勉強時間をブレることなく、一定に保つことが大切です。これらは本当に大切なことです。勉強よりも大切なことかもしれません。非常に難しいことだとは思いますが、できるだけ「継続」できるように心がけましょう。
そして何より大切なことは、自分を支えてくださっている周りの方々に対して、感謝の気持ちを常に忘れないようにしましょう。あなた一人では受験は絶対できません。親や先生、仲間でもありライバルでもある友達がいなければ、あなたの受験は絶対に成功しません。授業で使用するプリント一枚にも、時間を割いて作ってくださっている先生方がいるのです。
また、金銭的な面などで、受験することや浪人することを諦めるしかない人たちが全国にはたくさんいます。そんな中、あなたは受験することや浪人することを許していただいて、たくさんの人の支えのもと勉強することができているのです。受験というのは多くのことを犠牲にしなければいけません。遊びたくても遊び時間を削って勉強しなければなりませんし、恋愛なども勉強と両立することは難しいと思います。私は成人式などの人生の中で大切なイベントにも出ていません。辛いことが多いと思います。しかし、そんな時こそ、受験は自分一人のものではないんだということを思い出してください。受験できることを幸せに思いながら、自分を支えてくれている人たちのためにも頑張ろうという気持ちで頑張ってください。謙虚な気持ちをもつことは医師になってから最も大切なことだと大学の先生方もおっしゃっておりました。
最後になりますが、たった数カ月の努力次第であなたの人生は大きく変わります。受験が終わる最後の最後まで絶対に諦めないでください。来年の春、皆さんが笑顔で迎えられるように祈っております。