学習計画を立てるときに重要なことは、自分の目指す大学がどのような問題を出題し、どの程度解答すれば合格するのか、という現実を知ることです。それには4月の段階で直近の過去問を解いてみるのが最適です。なかには過去問を怖がってなかなか解こうとしない人がいますが、それだといつまで経ってもゴールは見えてきません。現実と向き合い、自分が本当に行きたい大学の要求レベルを知ることが合格の第一歩です。そのうえで、自分の現状とボーダーラインとの差を明確に認識し、限られた期限までにその差を埋めるための方法を考えます。
次に、自分の弱点を知ることです。まず、それぞれの科目の学習ベースとなる教材を選びます。最初は基本だけ理解できればいいので、なるべく薄いものにしてください。そして全範囲を一通り解きながら、どの分野が弱いのかをチェックします。薄いテキストなら2週間で終わるはずです。どこが分かっていて、どこが分からないのか、◯・△・×などマークをつけながら、選別作業を一気に進めてください。最終的に問題集の目次を見ながら、どの分野が苦手なのかを瞬時に判断できるように、全範囲を体系的に見渡せるようにしましょう。
高校生の場合、学校でまだ習っていない分野もあると思いますので、余裕がなければそこだけ除外してもかまいません。ただ、難関レベルを目指す人は学校の授業進度にとらわれず、自分でどんどん進めるべきです。意識レベルの高い受験者同士の競争となりますので、高3の夏が終わるまでに全範囲を終えることが望ましいです。人よりも上に行きたければ、人と同じことをしていてはいけません。人がしない努力を積み上げていくことが絶対に必要です。その意識をもてないようであれば、難関レベルには向かないので、避けたほうが良いでしょう。単なるブランドイメージだけではなく、自分の性格や学力、体力を冷静に分析しながら自分に合った志望校を選ばないと、後々ムダに苦しむことになります。
メディカルフォレストでは、生徒自身の学力と志望校についてのデータをもとにマネジメントミーティングを開きます。その生徒の目標設定について、直近の合格者や専門の講師たちと話し合うのですが、ここで学習目標を明確に設定するのが第一の目的です。
その際、その差をなるべく具体的な数値で表すようにしてください。たとえば、自分で解いた過去問の得点率を出して、ボーダーラインとの差が20%だとすれば、その差をどの科目でどれくらい埋められるかを個別具体的に考えましょう。また、公開模試の判定を夏までにAレベルまで引き上げ、冬までにSレベルにもっていく、などというように、達成感が得られる形で目標を設定してください。
計画表は、科目ごとに、
①学期単位
②月単位
③週単位
の3種類をつくります。長期・中期・短期と区切ることで、期限までにやるべきことをはっきり意識できます。学期単位の計画では、大まかに夏休みが終わるまでに基礎固めをする、2学期からは総合問題演習と過去問演習を始める、といったように、ゴールまでの大きな流れをイメージできるように工夫しましょう。月単位の計画では、科目ごとに使用する教材を決めたら、2か月で1周回す、というように具体的な回数を設定してください。教材の内容にもよりますが、1冊の問題集を年間通して5周以上は回したいところです。週単位の計画では、1日に何題やればいいかを決めます。1冊の問題集の総ページ数を30日で割れば、1日の問題数が分かります。短期間で細かく目標を達成することで、集中力も維持できますし、達成感によって向上心も上昇します。
計画表を自分の部屋に貼り出して可視化すると「決めたことをきちんとやろう!」という意識が強まりますし、周りに公表することで「しっかり考えて勉強しているな」という理解も得られるのでおすすめですね。また、周囲を巻き込むことで自分の言動に責任が生じてきますから、より気が引き締まりますよ。
計画を立てる時に、自分の可処分時間を完璧に把握できる人はほとんどいませんから、最初のうちは計画どおりにいかないのが当然です。一般的な合格者の モデルケースをベースにしたうえで、自分の適性に合うように、少しずつ学習計画を軌道修正しながら勉強を進めていきましょう。はっきり言ってしまえば、受験勉強における計画どおりの勉強は全体の8割くらいで、残りの2割は臨機応変に、走りながら考えていく、というくらいでいいのです。
たとえば、1週間のうち、月曜日から金曜日までは予定を入れ、土曜日と日曜日は空白にしておき、そこでやり残した分を仕上げる感じです。絶対に翌週に持ち越さないことが重要です。それをやると、復習する量が溜まってきて、いずれパンクしてしまいます。勉強への熱が一気に下がってしまいます。
体調が悪くてその日の範囲を終わらせられない時もあるはずですし、調子が良くて、もっとやれる!という時には、計画より多くの問題を解いてもいいのです。ただし、勉強を全くやらない日を作らないようにしましょう。1回休むと、ズルズル休んでしまうのが人間という生き物なのです。勉強を習慣化させることができれば、こんどはやらないと不安になる、という心理になります。スポーツをしている人ならわかるでしょう。一旦、運動する習慣がつき、食生活が改善されれば、意識や体質も変わり、以前のような食事ができなくなります。それと原理は同じです。
医学部受験では、何年もかけて勉強している受験生がいます。もちろん自分のペースで2年3年とかけてやるのも一つのあり方です。ただ、合格するために必要な勉強量は同じなわけで、それを3年に引き伸ばしてゆっくりやるか、一気に1年で集中してやるか、どちらがいいか学費の面からいっても体力や精神の面からいっても後者を目指すほうがいいと思います。そのためには、趣味や遊びの時間など、多くのものを捨てなければなりません。つまり、覚悟を決めないといけないということです。医師を目指すなら、いち早く医療現場に立って、自分のやりたいことを思う存分やったほうが実りある人生を送れるはずです。そう思うなら、あとは行動するのみです。受験勉強はやった分だけ、結果はついてきます。努力は裏切りませんから、安心して精一杯の努力を積み重ねてみてください。
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