第6回目のフォレストブログ25です。今日・6月20日は薬学者・長井長義(ながい・ながよし)の旧暦における生誕日(弘化2年6月20日生まれ、新暦では1845-1929)です。日本初の薬学博士である長井は、漢方の成分などを調べる中で植物の麻黄(まおう)からエフェドリンという成分を発見、これは後に喘息の治療に用いられることとなります。また、数多くの教育機関設立にも携わり、設立に尽力した日本女子大学では多くの女性科学者を育てるなど女子教育でも功績を残しています。
さて、今回のフォレストクイズでは日本における「がん治療」に関する問題を出題します。
Q.2019年に保険診療として開始し、今年3月末で登録患者数が10万件を超えた、がん患者の治療法の検討に用いる、がん細胞におきている遺伝子の変化を調べる検査のことを何という?
~答えは下にスクロール~
A.がん遺伝子パネル検査
がんは主に何らかの原因で遺伝子に傷が付くことで正しく働かなくなり、「がん細胞」化することで発症します。そうしたがん細胞のゲノム(遺伝情報)を調べ、どの遺伝子に変化が起こっているのか、どのような性質のがんなのか、どのように治療を進めていくかを判断していく医療を「がんゲノム医療」と総称し、現在の保険診療で受けられる「がんゲノム医療」の一つが「がん遺伝子パネル検査」です。「がん遺伝子パネル検査」を保険診療で受けられる病院は「がんゲノム医療中核拠点病院」「がんゲノム医療拠点病院」「がんゲノム医療連携病院」に指定された病院で、その数は2025年4月1日時点で250を超えています。また、「遺伝」に関する情報を患者が理解するための場として「遺伝カウンセリング」の実施も行われています。がん患者の中には生まれ持った遺伝子の特徴によりがんになりやすい体質の人「遺伝性腫瘍」である方もいますが、そうした場合などには家族と一緒に遺伝カウンセリングを受けることも可能となっています。
こうして集められたデータが今年3月末に10万件を超えました。これらのデータは現行のがん診療がどのようなものであるかを映すとともに、データベースとして学術研究や医薬品開発に役立てられています。ただし、現在のがん遺伝子パネル検査にはまだまだ課題が残されています。検査を受けても治療につながる情報が得られないことももちろんありますが、個々の遺伝子異常に対応した薬がない場合や、あっても日本では承認されていない場合などもあり、現状、がん遺伝子パネル検査が治療に直接結びついた例は10~15%ほどとのことです。現在の日本では、海外で用いられる新薬の承認が遅れたり、開発の見込みが立たなかったりする「ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス」という問題があります。こちらについては過去にフォレストクイズで取り上げていますのでそちらもご覧ください。(→フォレストクイズ⑳)これからの日本社会において避けては通れない「がん治療」という問題が、どのように進展していくのか、我々も注視していきたいですね。
さて、来週からは夏期タームが始まります。前期タームの勉強はしっかりと進みましたか?やり残してしまっている部分をしっかり消化して次に進んでいきましょう!暑さ対策も万全に!頑張れフォレスト生!
メディカルフォレスト上山
(次回のフォレストクイズ更新は7/2の予定です。)
出典
国立がん研究センター https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2025/0508/index.html がん遺伝子パネル検査 https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/knowledge/cancer_genomic_medicine/panel_test.html
コトバンク 長井 https://kotobank.jp/word/%E9%95%B7%E4%BA%95%E9%95%B7%E7%BE%A9-107561#goog_rewarded 長井の生涯について https://www.chemistry.or.jp/know/doc/isan024_article.pdf