日別アーカイブ: 2025年7月14日

フォレストクイズ25⑧

2025年7月14日

第8回目のフォレストクイズ25です。今日・7月14日はアルフレッド・ノーベルがダイナマイトを発明した日(1866)とされています。爆薬のニトログリセリンを扱いやすくするため珪藻土に染み込ませ、起爆のための雷管を取り付けた道具であるダイナマイトの発明により、ノーベルは巨万の富を得ました。ノーベルはダイナマイトという強力すぎる兵器が抑止力となり平和に繋がると見込んでいたようですが、結果的には戦争の規模を拡大させることになってしまいました。これを受けて私財を基に設立されたのがノーベル財団、そしてノーベル賞です。

さて、今回のフォレストクイズでは、そのダイナマイト発明の10年前の出来事から出題します。

Q.1856年、マラリア特効薬のキニーネを合成しようとしたウィリアム・パーキンが偶然にも発見し、のちに工業化に成功した、紫色の合成染料は何?

 

~答えは下にスクロール~

 

A.モーブ(モーベイン)

今日・7月14日は化学者ウィリアム・パーキン(1838-1907)が亡くなった日です。彼が作り出した「モーブ」は世界で初めて工業化に成功した合成染料とされています。彼の師匠であったホフマンは石炭を高熱で分解した際に残るコールタールからアニリンが得られることを見出していましたが、パーキンはこのアニリンからキニーネが合成できるのではないかと考えて実験を行いました。この時、アニリンに不純物が多く含まれていたがために、偶然にも紫色の染料を作り出すこととなります。当時、紫色の染料は貝の一種からわずかに得られるだけの、ごく貴重なものでした。パーキンは合成された染料の性質や、その製法について調べ、工業的に製造できることを確認すると特許を取得、ビジネス化することとしました。この染料を用いた紫色の衣服は、ロンドン万博でヴィクトリア女王が着用したり、フランスで売り出され人気を集めたりと一定の成功を見せました。この染料はフランスで売り出された際の「モーブ(モーベイン、フランス語で「葵」を意味する)」の名で知られることとなります。

さて、この「モーブ」の発見は「有機合成化学(様々な有機化合物の合成を目指す化学)」の一つの大きな源流となりました。モーブの発見により様々な色素が合成されるようになり、ただ「染める」という目的にとどまらず、半導体や液晶にもその技術が用いられるようになります。更には合成染料に留まらない、有機合成化学の手法による様々な製品の研究開発が発展し、プラスチックのような高分子物質や医薬といった今日用いられる製品に繋がっていきます。更に医学の分野でいえば、合成染料による染色技術の発展が細菌を染色させる観察する手法に繋がり、感染症学の発展を促したという側面もあります。パーキンがモーブを発見した時のような「偶然の発見」を「セレンディピティ」などと言いますが、パーキンがその偶然を好機と捉え、研究を深めていったからこそ今日の生活があるのだと思うと、その影響力の大きさに驚かされます。

さて、今週末には第3回実力テストが行われますね。前回の実力テストを受けて学習計画を立てて頑張ってきたことと思います。今の自分を確認し、次に繋げていきましょう!頑張れフォレスト生!!

メディカルフォレスト上山

(次回のフォレストクイズ更新は7/26の予定です。)

出典

コトバンク パーキン https://kotobank.jp/word/%E3%81%B1%E3%83%BC%E3%81%8D%E3%82%93-3165140#w-113585                                                         コトバンク モーブ https://kotobank.jp/word/%E3%82%82%E3%83%BC%E3%81%B6-3173573#E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E5.85.A8.E6.9B.B8.28.E3.83.8B.E3.83.83.E3.83.9D.E3.83.8B.E3.82.AB.29                                 パーキンの生涯について https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/23869                     コトバンク アニリン https://kotobank.jp/word/%E3%81%82%E3%81%AB%E3%82%8A%E3%82%93-3141275#w-1867786                                                      モーブの流行と合成染料の感染症学への導入 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/70/8/70_376/_pdf/-char/ja                       コトバンク 有機合成化学 https://kotobank.jp/word/%E6%9C%89%E6%A9%9F%E5%90%88%E6%88%90%E5%8C%96%E5%AD%A6-1603207#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89                  色素の研究について https://www.nikkakyo.org/upload/plcenter/349_371.pdf                  コトバンク セレンディピティ https://kotobank.jp/word/%E3%81%9B%E3%82%8C%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%84%E3%81%B4%E3%81%A6%E3%81%84-3240496#w-2659131

ノーベル ダイナマイト発明 https://gendai.media/articles/-/56229                ノーベル ノーベル賞設立 https://diamond.jp/articles/-/326029