第19回目のフォレストクイズ25です。1938年の今日・10月30日、アメリカでラジオドラマ『宇宙戦争』が放送されました。高名なSF作家であるH・G・ウェルズの作品をオーソン・ウェルズが脚色し、ラジオのニュース番組のような演出で放送した結果、「人々はこれを真実と思いこみパニックになった」というエピソードがよく知られています。この「パニック」については実際に起こったかどうかは怪しいとされており、例えば事実を確認しようと警察やテレビ局に電話が多く寄せられたことは本当のようですが、そこから人々が実際に逃げまどったり、混乱の末に負傷者が出たり、といったことはほとんどなかったとされています(そもそも聴衆率自体もそこまで高いものではなかったとも)。このドラマ自体がフェイクであったばかりか、世に広まった伝説もフェイク、という何とも不思議なこの逸話は、今の我々にとっても重要なテーマと言えそうです。面白いと思うものや、もっともらしいもの、信じたいものを信じてしまいがちなところで、一旦立ち止まって俯瞰で見てみること、信じ込みすぎずに踏みとどまることが、「アテンションエコノミー(情報過多の社会において、人々の注目が経済的価値を持つとされる状況のこと)」の現代社会を生き抜くコツかもしれません。
さて、今回は医学を志す人々にとって重要な人物について出題いたします。
Q.「人類みな兄弟」の言葉でも知られる、赤十字社を設立し、第1回ノーベル平和賞の受賞者ともなった人物は誰?
~~~答えは下にスクロール~~~
A.(ジャン=アンリ・)デュナン
今日・10月30日はデュナン(1828-1910)の命日です。元は銀行員であるデュナンは赴任先のアフリカの人々の暮らしを救うべく事業を行うためにナポレオン3世に交渉しようとした際、イタリア統一戦争の戦地・ソルフェリーノの凄惨なさまを目撃し、戦争下における中立的な救護組織が必要であることを訴えました。1864年、ジュネーヴ条約により国際赤十字が発足します。そして1901年に第1回ノーベル平和賞を受賞……、と書くと話は簡単ですが、実はその間にデュナンは苦難を経験します。デュナンの事業は結局上手くいかず、経済的に困窮することとなり、浮浪者同然の生活を送ることとなります。彼の功績が再び知られるようになったのは1895年のこと、スイスの新聞記者が彼の元を尋ね、記事として大々的に紹介したことがきっかけでした。デュナンはその間実に30年近い雌伏の時間を過ごしたことになります。それでもデュナンはノーベル平和賞の賞金を慈善事業に寄付したといいます。博愛を貫いた生涯、といえるでしょう。
メディカルフォレスト 上山
出典
コトバンク デュナンhttps://kotobank.jp/word/%E3%81%A7%E3%82%86%E3%81%AA%E3%82%93-3160474#w-2058035
デュナンの生涯 日本赤十字 https://www.jrc.or.jp/chapter/ehime/pdf/c2c1503b063227a88bb14c3aa86a4c84b3a05d7e.pdf
https://www.jrc.ac.jp/application/files/9517/1083/1723/henrydunant202403.pdf
ナショナルジオグラフィック 宇宙戦争 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8501/
